「ドーズの限界」F値と焦点距離からレンズの解像限界がざっくりわかる方法!

「ドーズの限界」F値と焦点距離からレンズの解像限界がざっくりわかる方法!
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カメラや天体望遠鏡の世界において、レンズがどれだけ細かなものを見分けられるかという能力を「解像力」と呼び、光学機器の性能を語る上で最も重要な指標の一つです。

解像力を示す物理的な限界点の一つが「ドーズの限界(Dawes’ Limit)」です。

ドーズの限界を知る事で、適切なカメラ(イメージセンサー)とレンズの組み合わせを知る事が出来ます。

レンズを自由に付け替える事が出来るマウントシステムにおいて、選ぶカメラ(イメージセンサー)とレンズの組み合わせ次第では以下のようにアンバランスになる事があります。

  • 解像力に定評のあるレンズを使っても2000万画素のカメラではレンズの解像性能を活かしきれない
  • 6000万画素のカメラを買っても、安いレンズでは6000万画素相当の解像はしない

この記事では、ドーズの限界の定義から計算方法、実際のレンズにおける考え方までを詳しく解説します。

最適な組み合わせを選ぶ事で、不必要に高いレンズやカメラを買わなくても満足出来る可能性もあります!

レンズの性能は解像度だけでなく重さや描写の味などもありますので、
本記事の目的は解像度が最適なレンズを厳密に探究することではなく、「だいたいどのくらいのレンズを選べば良いの??」というオーダー感を知ってもらう事です。

結論として、以下のような表をこの記事で算出していきます!

換算焦点距離 (f) [mm] *1限界画素数
(Full Size : F8.0)
限界画素数
(APS-C : F5.0)
限界画素数
(MFT : F4.0) *2
503933万画素4059万画素3866万画素
243142万画素3674万画素3632万画素
2004256万画素4184万画素3938万画素
※1) 換算焦点距離50mmとは、APS-C 31.25mm、MFTは25mmのレンズを使用した場合
※2) MFT:マイクロフォーサーズ

1. 回折:光学解像度の物理的限界

レンズの最も物理的な限界は、レンズの収差や製造上の欠陥といった「不完全さ」に起因するものではなく、光そのものが持つ「波」としての性質によって生じる物理現象「回折」です。

例えば上記(1)のように小さなスリット穴を光が通った場合、回折が原因で点光源は完璧な「点」にはならず、縞模様になります。(2)のように穴の場合はエアリーディスクと呼ばれるわずかな広がりを持った円盤状となります。

2つの非常に近い点光源がレンズを通った場合、それぞれの点が僅かに回折します。回折した光が近付きすぎてこの円盤が重なると、人間やカメラのセンサーには一つの点にしか見えなくなります。2つの重なりの限界を数値化したものがドーズの限界です。

回折限界の定義

理論上完璧で、収差が全くないと仮定した理想的な光学系が達成できる最高の解像性能を「回折限界」と呼びます。この限界は、エアリーディスクの大きさに直接関係しており、その大きさは光の波長 λ に比例し、レンズの口径(開口部の直径 D)に反比例します。数式で示すと、エアリーディスクの半径 r は以下のように表されます。

ここで、f は焦点距離、N はカメラの設定値であるF値(f/D)です。この式から、口径が大きい(D が大きい、またはF値 が小さい)ほど、また、光の波長が短い(例えば、赤色光よりも青色光)ほど、エアリーディスクは小さくなり、より高い解像度が得られることがわかります。

回折という物理現象によって、写真撮影における解像力のトレードオフが発生します。

レンズの絞りを絞る(F値を大きくする)ことは、被写界深度を深くし、レンズ収差を軽減させる効果があるため、画像のシャープネスを向上させる手段として用いられます。

しかし、絞りを絞ると物理的な開口径 D は小さくなり、回折限界によって定められる最大解像度は逆に低下してしまうのです。この、絞りを絞りすぎることによって回折現象が支配的になり画質が不鮮明になる現象が、「小絞りボケ」として知られているものです。

2. ドーズの限界:解像度への経験的アプローチ

光学系の理論的な解像限界が物理学によって定義される一方で、実際の観測現場や機材の能力を総合した実践的な指標が求められました。

このような背景から生まれたのが「ドーズの限界」であり、これは理論ではなく、純粋な観測経験に基づいて導き出された解像度の経験則です。

ウィリアム・ラッター・ドーズ

ドーズの限界は、19世紀のイギリスの天文学者、ウィリアム・ラッター・ドーズ牧師(William Rutter Dawes)の名にちなんで名付けられました。

彼は医師でしたが、天文学に深い情熱を注ぎ、特に連星(互いの周りを公転する二つの恒星)の観測に生涯を捧げました。ドーズは、所有する多数の望遠鏡の性能を比較する中で、ドーズの限界の元となる法則性を見出しました。

ドーズは、口径の異なる様々な望遠鏡を用い、熟練した観測者が、ほぼ同じ明るさの6等星からなる近接した連星を、一つの伸びた光の塊としてではなく、二つの独立した星として「分離」して認識できる最小の角距離を体系的に調査しました。

このアプローチの核心は、レンズや望遠鏡という光学機器単体の性能を測るのではなく、「光学機器+人間の視覚・脳」というシステム全体の総合的な性能を評価した点にあります。

【補足】カメラへドーズの限界を適用する場合、人間の視覚・脳ではなくイメージセンサーの画素ピッチを考慮する必要があります。こちらは後半で触れていきます。

ドーズの限界の定義

ドーズの限界とは、2つの点光源(例えば遠くにある2つの星)が、1つの点ではなく、かろうじて二つの点として認識できる最小の角距離(※)を指す指標です。

※角距離(かくきょり)とは、球面上にある2点A点・B点の距離を、角度で表したものです(下図の Θ)。

ドーズの限界の計算方法

ドーズの限界を求める公式は非常にシンプルです。レンズの口径を D とすると、解像できる最小の角距離(秒)は以下の式で表されます。

計算式(口径がミリメートルの場合)

R = 116 / D

  • R:解像力(秒角、arcseconds)
    ※秒角、arcseconds:天文の世界で用いる、小さな角度を表す単位
  • D:レンズの口径(mm)

計算の例

簡単な例として、以下の条件で計算してみます。

レンズの口径計算式ドーズの限界(秒角)
50mm116 / 502.32秒
100mm116 / 1001.16秒
200mm116 / 2000.58秒

この結果からわかる通り、レンズの口径が大きければ大きいほど、より細かなものを見分ける能力(高い解像力)が得られることになります。

【参考】レイリーの限界との違い

光学の世界にはもう一つ、「レイリーの限界(Rayleigh Criterion)」という指標があります。

レイリー限界は、純粋に理論的な考察から導かれた解像度の基準です。
19世紀の物理学者、レイリー卿(ジョン・ウィリアム・ストラット)によって提唱されました。

レイリー限界は、二つの点光源が「ちょうど分離できる」状態を、それらの回折像(エアリーパターン)の幾何学的な重なり方によって定義します。

具体的には、「一方の点光源のエアリーディスクの中心が、もう一方の点光源のエアリーパターンの第一暗環(最も内側の暗いリング)の真上に位置するとき」を、分離可能な限界点とします。

  • レイリーの限界: 光の波長に基づき、数学的に「一つのエアリーディスクの中心が、もう一つのエアリーディスクの最初の暗環に重なる」状態を定義したもの。
  • ドーズの限界: 人間の目が「ひょうたん型に見えれば二つと判断できる」という経験則に基づいているため、レイリーの限界よりも約15%ほど小さな値になります。

つまり、ドーズの限界は物理学的な厳密さよりも、実用的な観測において「どこまでなら分離して見えるか」を追求した指標と言えます。

「解像」という言葉は明確に定義できないが・・

この2つの指標の存在から、「解像」という言葉に単一の絶対的な定義は存在しないという事実があります。

さらに、二つのピーク間のくぼみが完全になくなり、輝度プロファイルの頂上が平坦になる点を分離限界とする「スパローの限界」という基準も存在します。

これら複数の定義の存在は、「見る」という行為の複雑さと、解像度という概念の奥深さを示しています。

現実の光学的な観測は二元的な状態(分離できた/できなかった)ではなく、連続的なスペクトラム上に存在します。つまり、どの点を「限界」とみなすかは、目的に応じて選択されるべき基準です。

本記事の目的はその曖昧な定義の深堀りではなく、「だいたいどのくらいのレンズを選べば良いの??」というオーダー感を知る事です。

3. 実際のカメラレンズへ応用するための基礎理論

元来、天体望遠鏡の性能評価のために生まれたドーズの限界ですが、その原理はカメラレンズでも参考にすることができます。

ここからは、現代のカメラレンズの仕様からドーズの限界を算出し、そのレンズが持つ理論的な解像性能の限界を定量的に評価するための具体的な手法を解説します。

F値の影響

ドーズの限界はあくまで対物レンズの物理的な直径(有効径)に依存します。
カメラレンズの場合、レンズ本体の直径ではなく「F値」を考慮した「有効口径」で考えます。

有効口径 D も、簡単な式で計算できます。

D = f / N

  • D:有効口径(mm)
  • f:焦点距離(mm)
  • N : F値(N)

望遠レンズの方が焦点距離 f が大きいため、同じF値だと望遠レンズの方が有効口径 D が大きくなります。
有効口径が大きなレンズほど、秒角で示す理論上の解像限界値は高くなります。

レンズ仕様焦点距離 (f) [mm]F値 (N)有効口径 (D = f/N) [mm]ドーズの限界 (R = 116/D) [秒角]
標準単焦点50f/1.435.73.2
標準単焦点50f/8.06.318.6
広角単焦点24f/1.813.38.7
広角単焦点24f/8.03.038.7
望遠ズーム200f/2.871.41.6
望遠ズーム200f/8.025.04.6

上記がドーズの限界を見る上での最も基本的な表です。

ここから、「秒角」を焦点距離とセンサー解像度を考慮して、使える表にしていきます。

イメージセンサーの画素ピッチとの関係

レンズにどれだけ高い解像力(ドーズの限界が小さい値)があっても、光を受け止めるイメージセンサーの画素が粗ければ、細部を記録することはできません。
逆に、画素が細かすぎても、レンズの回折限界によって解像力が頭打ちになります。

画素ピッチと光が入ってくる状態を示した模式図が下記です。
複数の光線が同じ画素に入っている様子がわかりますね。

撮れる写真の解像力は、センサーの画素ピッチとレンズの性能を組み合わせた悪い方で決まります。

ドーズの限界を画素数に変換した表

ドーズの限界で決まった「秒角」を画素数で考えるためには、レンズの焦点距離と視野角が重要になります。

視野角 FoV (Field of View)の求め方は単純な算数の相似を使って求める事ができます。
視野角の求め方を詳しく解説してあるサイトがありますので、参考に貼っておきます。
https://orcamagazine.com/post-909/

引用元:https://orcamagazine.com/post-909/

式を見ると、視野角 FoV はイメージセンサーのサイズ size と焦点距離 f で決まります。
※この式は通常レンズのみで、魚眼レンズでは使えません。

Canonのフルサイズセンサー(約36mm x 24mm)を用いた場合の表を示します。
SONYなど各社僅かにセンサーサイズが違いますが、フルサイズであればほとんど同じ結果になります。

レンズ仕様焦点距離 (f) [mm]F値 (N)最小視野角 [deg]
※36mmセンサー
限界画素数
標準単焦点50f/1.40.0009012.8億画素
標準単焦点50f/8.00.00523933万画素
広角単焦点24f/1.80.00246.2億画素
広角単焦点24f/8.00.0113142万画素
望遠ズーム200f/2.80.000453.5億画素
望遠ズーム200f/8.00.00134256万画素

この表は全ての光源が最小視野角で理想的に36mm x 24mmのセンサーへ入った場合の限界画素数を算出したものです。
一般には斜め方向ではなく縦・横方向の解像が視覚的に重視されるため、長辺である36mmで計算しています。

実際のレンズでは回折やこの後説明する様々な光学限界があるので、開放F値でこの表にある数億画素数まで解像出来るという考え方は間違えています。

この表で見るべきポイントは、F8に絞ると想像以上に画素数が低くありませんか?という点です。

例えば6000万画素のセンサーでF8で撮っても、1画素レベルまで解像する事はほとんど期待できないという事は事実です。この表の数値は物理的な限界だからです。

4. 決定版!センサーサイズとF値毎の限界画素数の目安

この記事で最も言いたい結論をこの4章で記載します。

カメラのセンサーサイズ、F値設定、レンズの焦点距離によって限界画素数がどのようになるのか、表にまとめました。
※MFT:マイクロフォーサーズ

換算焦点距離 (f) [mm]F値 (N)限界画素数
(Full Size)
限界画素数
(APS-C)
限界画素数
(MFT)
50f/1.412.8億画素5.2億画素3.2億画素
50f/8.03933万画素1586万画素966万画素
24f/1.86.2億画素2.8億画素1.8億画素
24f/8.03142万画素1435万画素908万画素
200f/2.83.5億画素1.3億画素8037万画素
200f/8.04256万画素1634万画素984万画素

Full Size:Canonフルサイズカメラの36mm x 24mmで計算。参考に、SONYは35.7mm x 23.8mm。
換算焦点距離は1倍で、表の換算焦点距離50mmは50mmのレンズ。

APS-C:Canon APS-Cサイズカメラの22.3mm x 14.9mmで計算。参考に、SONYは23.5mm x 15.6mm。
換算焦点距離は1.6倍で、表の換算焦点距離50mmは31.25mmのレンズ。

MFT:各社共通規格で、17.3mm x13.0mmで計算。
換算焦点距離は2倍で、表の換算焦点距離50mmは25mmのレンズ。

APS-CとMFTの解像限界画素数が想像以上に低くて驚きませんか?

ここにはもう1つカラクリがあって、同じF8.0で換算焦点距離50mmでも、センサーサイズが小さいとAPS-Cでは31.25mmのレンズ、MFTでは25mmのレンズと、開口径 D が小さくなってしまうからです。

Full SizeではF8.0がレンズの解像性能を引き出す定番(スイートスポット)と良く言われます。
実はAPS-CやMFTではF8.0がスイートスポットではありません。

開口径から考えて、APS-CではF5.0程度、MFTではF4.0程度がFull SizeのF8.0に相当するレンズ性能と考えるのが自然です。
※ボケ量についてはFull Size F8.0とAPS-C F5.0は厳密には異なりますが、ざっくり考える分にはこれで問題ないです。

【結論】一番実用的な表

つまり、Full Size F8.0相当について実用的な比較をするとこのような表になります。
この表が結論と言うべき、覚えておくと一番実用的な表です。

換算焦点距離 (f) [mm] *1限界画素数
(Full Size : F8.0)
限界画素数
(APS-C : F5.0)
限界画素数
(MFT : F4.0) *2
503933万画素4059万画素3866万画素
243142万画素3674万画素3632万画素
2004256万画素4184万画素3938万画素
※1) 換算焦点距離50mmとは、APS-C 31.25mm、MFTは25mmのレンズを使用した場合
※2) MFT:マイクロフォーサーズ

どうでしょうか?
この数値はあくまで理想的な限界値ですので、実態として各カメラメーカーが2000万~3000万画素のカメラを多く出す理由がわかってきませんか?

4000万画素以上の高画素機の解像性能を引き出すには、F値が明るい(低い)レンズでフルサイズならF4.0など、なるべく絞らずに撮影する必要がある事を理解しておく必要があります。

F値と解像限界の理論は1画素まで解像できるかどうかなので、トリミングしても解決しません。高画素機でトリミング耐性を得たいのであれば、やはりF値に気を付ける必要があります。

また、本記事の結論と少し逸れますが、フルサイズではF8.0付近、APS-CではF5.0付近、マイクロフォーサーズではF4.0付近がレンズの性能を引き出すスイートスポットである事が多い事は覚えておいて損はないでしょう。

5. 理想的な限界値からの劣化要因

4章で大まかに把握するための結論としての表を載せました。
ここからは、理想的な限界画素数からの劣化要因について考えていきます。

ドーズの限界は、回折によって定められる光学系の実践的な性能限界を知る上で非常に有用です。

しかし、デジタルカメラで撮影された一枚の写真の最終的なシャープネスは、回折限界だけで決まるわけではありません。それは、「回折」「レンズ収差」「センサー解像度」という三つの要素が複雑に絡み合った結果であり、システム全体として捉える必要があります。

回折

1章で説明した通り、光の波動性に起因する物理的な限界であり、像の広がり(ボケ)を引き起こします。

回折の影響は、絞りを絞り込むほど(F値が大きいほど)顕著になります。この影響はドーズの限界で考慮できています。

レンズ収差

レンズには色収差や球面収差などの「結像の不完全さ」があります。

レンズの設計や硝材の物理的制約に起因する、結像の「不完全さ」です。球面収差、コマ収差、色収差など様々な種類があり、点光源を点として結像させることを妨げ、像をぼかしたり歪ませたりします。

収差は一般的に、絞り開放時(F値が小さい時)に最も顕著に現れ、例えばフルサイズのF値2.0以下程度では4章の回折限界より前にレンズ収差が原因で解像度が劣化する事が一般的です。

センサー解像度

レンズによって結像された光学像をデジタルデータとして記録するのがイメージセンサーです。

センサーが持つ個々の画素(ピクセル)の大きさや間隔(画素ピッチ)によって、記録できるディテールの細かさには限界があります。

4章で記載した限界はあくまで2つの光源から放たれた光線が2つの画素へ入るかどうかだけを考慮しました。
実際には光学情報は連続性のあるスペクトルであり、2つの光源を区別できるかどうかは回折や収差などを考慮したレンズ性能に起因します。

回折や収差を考慮したレンズ性能を示すチャートがMTF曲線であり、これを用いる事でさらに詳細にシステムの整合性をチェックする事ができます。

MTF曲線の概要

MTF曲線は、レンズが被写体の持つコントラストをどの程度忠実に像として再現できるかを示すグラフです。

グラフの横軸は像高(画面中心からの距離)、縦軸はコントラストの再現率(1.0が100%)を表します。
通常、グラフには複数の曲線が描かれており、これらは空間周波数(例:10本/mmや30本/mm)と、測定方向(放射方向と同心円方向)の違いを示しています。

低い空間周波数(例:10本/mm):粗いパターンの再現性を示し、主にレンズの全体的なコントラスト性能を反映します。「ヌケの良さ」とも表現されます。
高い空間周波数(例:30本/mm):細かいパターンの再現性を示し、レンズの解像力(シャープネス)を反映します。
サジタル(S)とメリジオナル(M):放射方向と同心円方向の線の再現性を示します。二つの線の乖離が少ないほど、非点収差が少なく、均質で美しいボケ味を持つ傾向があります。

下の画像はCanonの単焦点レンズRF85mm F1.2 L USMのMTF曲線を例として載せています。
一般的に10mmより30mmの方が低く、中心より周辺の方が低くなります。
SとMは揃っている方がボケが乱れにくい傾向にあります。

【補足】MTF曲線には統一の指標がありません。例えばCanonは回折を考慮した波動工学的MTF、他ほとんどのメーカーは回折を考慮しない幾何光学的MTFを掲載していると言われています(SIGMAは両方を記載)。
波動工学的MTFの方が現実の性能であり、幾何光学的MTFでシステム性能を評価した所であまり意味もありません。
MTF曲線を含めて解像性能を確認するのはレンズ1つ1つの検証となり手間です。さらに、MTF曲線がレンズ性能の全てではありません。
個人的には4章で示した「ざっくり検証」で、ほとんどの人は満足するのではないかな、と思っています。

経験的に語られる「スイートスポット」の存在

レンズ収差と回折は、絞り値に対して正反対の挙動を示します。

この相反する二つの要因のバランスによって、ほとんどのレンズには最もシャープな画像が得られる最適な絞り値、いわゆる「スイートスポット」が存在します。

  • 絞り開放付近 (例: f/1.8):回折の影響は最小限だがレンズ収差が大きく、画像のシャープネスは収差によって制限。
  • 絞りを絞り込んだ状態 (例: f/16, f/22):収差は十分に補正されるが、回折の影響が支配的になり小絞りボケによってシャープネスが制限。
  • 中間的な絞り値 (例: f/5.6 – f/8):絞り込むことで収差が軽減され、かつ回折の影響が深刻になる前の領域。収差と回折のバランスが最も良くなり、レンズは最高の解像性能を発揮。

スイートスポットはレンズにより異なりますが、フルサイズであればF5.6からF8.0の間にある事が多いです。

【補足】4章で書いた通り、開口径サイズの違いによりAPS-CはF5.0以下、マイクロフォーサーズはF4.0以下でスイートスポットとなる傾向にあります。F8.0ではない事に注意しましょう。

まとめ

ドーズの限界は、「レンズの有効口径が解像度を決める物理的な壁である」ことを教えてくれる重要な指標です。

本記事では4章で解説した以下の表を頭に入れておいて頂ければ、そこからの比較で目安が出来るのではないかな、と思います。

換算焦点距離 (f) [mm] *1限界画素数
(Full Size : F8.0)
限界画素数
(APS-C : F5.0)
限界画素数
(MFT : F4.0) *2
503933万画素4059万画素3866万画素
243142万画素3674万画素3632万画素
2004256万画素4184万画素3938万画素
※1) 換算焦点距離50mmとは、APS-C 31.25mm、MFTは25mmのレンズを使用した場合
※2) MFT:マイクロフォーサーズ

本記事の内容を踏まえた大雑把な目安としては、以下のようなイメージです。

  • 「限界画素数」の性能の2/3程度のセンサー画素数(3000万画素程度)があれば、そのレンズの性能を十分発揮した写真が撮れるポテンシャルがある。
  • 4000万画素~7000万画素程度の高画素機を用いる場合、設定F値に気を使う必要がある。開放F値の暗いレンズでは高画素のメリットが全く活かせず、ファイルサイズが大きくなるだけになる恐れがある。

カメラは撮影シーンによって色々な機材を使うので、まずは細かい事よりも大筋を掴んでおくことが重要です。

特に天体撮影で超高解像を目指す場合やF値の暗いレンズでの撮影を考える場合は、この「口径と解像力の関係」を意識してみると、機材選びや設定の理解がより深まるはずです。

RFマウントについてはレンズスペックと一覧でまとめた記事を作っていますので、良かったらご覧ください。

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最後まで読んで頂いてありがとうございましたm(_ _)m
おわり。

この記事を書いた人 Wrote this article

kenshi2009

kenshi2009

写真歴25年のベテラン写真家。愛機キヤノンEOS R5 Mark IIとEOS R6 Mark IIを手に、旅や日常の心揺さぶる瞬間をスナップします。また、燻製料理への知識も深く、店舗の料理メニュー写真を手掛ける事も。食と写真、両方の分野で豊かな表現を追求しています。 燻製17年目🍖、写真26年目📷、ブログ26年目📓。 奈良好き🦌 X(Twitter)にほぼ毎日います!【SNS一覧:https://lit.link/kenshi2009】